我が秘密の生涯
ビクトリア朝の真実を語る奇書 - 我が秘密の生涯
我が秘密の生涯(My Secret Life)という奇書がある。 ピサヌス・フラクシが著者であるが、これは偽名で、ヘンリー・スペンサー・アッシュビーが本当の著者だと推測されている(そうでないという説もある)。
- 「わが秘密の生涯」と書かれている記事もある(Wikipediaなど)。
全11巻。4000ページに及ぶ大部の著作だが、内容は19世紀後半のイギリス・ヴィクトリア朝時代のある男性の性生活が生涯にわたって書かれているだけ、である。いわゆるポルノグラフィーなのだが、それだけが延々と続くのはかなりの圧巻である。
日本語版は複数の版元から、縮刷版も含め数種類が出版されているようだ。 私がざっとWebで調べただけでも8種類存在する。 残念ながら全訳は學藝書林版(絶版)だけのようだ。入手困難である。
さて、我が秘密の生涯は、立派なポルノグラフィーなのであるが、読んでいくうちに、この本が書かれた当時(19世紀後半)のヴィクトリア朝の様子がうっすらと透けて見えるようになってくる。上流貴族と庶民の格差、貧困階級の絶望的な貧しさ。そして文化や生活。大英帝国の基礎は貧困階級からの搾取であるのがまざまざと見えてくる(そして、戦前の日本の社会も類推できる)。
この歴史的な奇書を世に紹介したのが、 もう一つのヴィクトリア時代である。 作者のスティーブン・マーカスが性生活研究所で得た知見を元にヴィクトリア朝におけるポルノグラフィーの意味、社会との関連等を書いている。
この手の本は、古代史の偽書もそうだけど、内容そのものより、その本が書かれた時代背景とか意図を推測する方が面白い。
さまざまな日本語版
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いろんなバージョンがあるみたい
- 河出文庫 全1巻 ダイジェスト 田村隆一訳 1998年
- 富士見ロマン文庫 上中下 ダイジェスト 田村隆一訳 1982年
- 駿河台出版 新書4分冊の合本 ? 1982年 http://www.mandra.jp/oldversion/d2_book01.htm
- 學藝書林 全11巻 四六判 ? 田村隆一訳 1977年 (約250ページ*11冊?)
- 駿河台書房 上下 新書 金子元、井上秀夫訳 1976年 http://item.furima.rakuten.co.jp/item/50399026/ http://www.d3.dion.ne.jp/~yami/gaibun1.htm
- 三崎書房バニーブックス 新書版 全6+1巻 田村隆一訳 1970年(7巻の訳は中村啓)
- ルー出版 全5巻(1500ページ) B6版 ? 佐藤晴夫訳 1997-1998年 http://www5d.biglobe.ne.jp/~furuneko/fuzoku.htm
- 我が秘密の生涯 1982年 現代ジュゲム・プロダクション 巻数不明
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謎
- 駿河台版は全4,全2,1巻本の3種のようだが、全部同じ? 全4のはずが間違って表示されてる?
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英語サイト
入手方法
- 河出文庫版・富士見文庫版はamazonマーケットプレイスから入手が可能。
- その他の版は古書店のサイトをたんねんに調べないと見つかりにくい。
[[$$amazon-search-result books-jp 我が秘密の生涯]]
- 英語版(My Secret Life)はたまにamazonで売られているが、滅多に見かけない。
[[$$amazon-search-result books-us my secret life]]
かつては http://www.my-secret-life.com/ にて全文が公開されていたが、今はアダルトサイトになっている。 (archive.org: My Secret Life | By Anonymous Victorian "Walter" (Full Text eBook) )
リンク
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第5回 『我が秘密の生涯』の秘密(乱視読者の小説千一夜 若島正)
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エロティックな大英帝国 紳士アシュビーの秘密の生涯 (平凡社新書 小林章夫著)
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『我が秘密の生涯』第1巻 作者不詳 田村隆一訳 発行学芸書林 (武蔵野日和下駄)
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田村隆一訳『我が秘密の生涯』(學藝書林)全11巻をネットで購入 (映画監督 横山博人ブログ)
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我が秘密の生涯 全11巻 (復刊リクエスト)
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国際シンポジウム : 生と性、自伝、あるいは、フィクション(一橋大学大学院言語社会研究科)
- http://gensha.hit-u.ac.jp/news/20120721.pdf
- 【特別講演】『わが秘密の生涯』(My Secret Life)を読む http://www.vssj.jp/newsletter/nl-12.pdf
- 「一種ののライフ・ヒストリーまでが語られていて、ときに心打つ物語となっている。本書がヴィクトリア時代の貧困の実態や売春の実情を知るうえで第一級の資料であることも否めない」